THE長文日記

長文とか短文とかのクレームは一切受け付けません

いまこそクレイジーキャッツを見直すべき時期

 今の若い人も、たぶん僕と同世代の人もほとんど知らない、クレイジー・キャッツというグループがある。
 植木等、ハナ肇、谷啓といった綺羅星のごときスターを排出したコミックバンドだ。1960年代に日本のサラリーマンシーンを一変させた。


 彼らの楽曲は、とにかく能天気である。彼らはこれをC調と呼ぶ。


 C調とは、ドレミファソラシドのハ長調であり、「しいちょう」という日本語は「調子いい」の反対言葉(いわゆる今でいう業界用語)にもなる。


 全く知らない人のために歌詞を一部引用すると

金のないやつぁ俺んトコへ来い。

俺もねえけど心配すんな。

見ろよ青い空 白い雲

そのうちなんとかなるだろう


 もしかするとこの曲自体は聞いたことがあるかもしれない。


 このクレイジー・キャッツが大活躍していた頃のクレイジー・キャッツ主演映画群がとにかくすごい。おもしろい。


 主人公は植木等。脇役にハナ肇と谷啓が固める。
 すごくたくさんシリーズがあるのだが、どれを見てもだいたい面白い。


 今の日本のドラマやアニメはすべてどこか陰気である。
 本来はポップであるはずのポプテピピックも、どちらかというとウラの笑いである。


 ここ20年の物語の全ては、どこか人生を楽しんではいけない、自分たちは政権政党に騙されている、悪いやつばかりが世の中にのさばり、真面目にやるやつぁ苦労する・・・まあそんなところだろう。要は痛快さが全くないのだ。これはハリウッド作品にも共通する。インディ・ジョーンズやスターウォーズ初期三部作に比べて、どんどん陰気になってる。それは新三部作でもそう。もう陰気でないと売れないのかね、と思ってしまう。


 それに比べると、クレイジー映画は圧倒的能天気さにあふれている。


 「それは高度経済成長の時代だからでしょ?」と思うかもしれないが、実際には違う。
 むしろ植木等扮する主人公(名前は作品ごとに微妙に変化する)が、ノリの良さと勢いだけで、とんとん拍子に出世して、適当なことを言ってたと思ったら、最後はなんと社長になってしまう。


 主人公を妨害するのは既得権益。今の物語では決して打ち負かすことができない大企業や大金持ちといった鼻持ちならない連中で、あっと驚く意表を突く作戦で難題を次々と解決していく様は痛快の一言。


 21世紀を生き抜くヒントがクレイジー映画の作品群にはあるのではないかと思う。


 まずおすすめなのは、ニッポン無責任時代。Amazonプライム・ビデオでも見れるのでお手軽。


ニッポン無責任時代

ニッポン無責任時代


 記念すべきクレイジー映画の第一作。「平等と書いてたいらひとし」がノリの良さと無責任で恋も仕事も全部まとめて最後は責任をとってしまう。極めて無責任な発言を繰り返しているのに、最後に振り返ると全部責任をとっている、これがカッコいい。まさに胸のすくような思いを当時のサラリーマンは抱いたのではないか。


 もちろん物語の主人公というのは、「自分がそんなふうに生きられたらどんなにいいだろう」という羨望を体現する存在なので、実際にそんなことはできはしない。けれども、できはしないことを夢見せるのがエンターテインメントの本来の役割ではないだろうか。


 スターウォーズの新三部作は好きだが、しかし父殺しをするカイロ・レンや、命がけで戦い、消えていくルークの姿を何度も見て胸を熱くしたとしても、生き様に憧れたりはしない。


 だがクレイジー映画の主人公は、どれだけ無責任な放言をしていても、最後はかならず解決する。そんなことは無理だと思っていても、もしかしたら俺にもできるかもしれない、という勇気をもらえる。今の日本人に必要なのは、そういう冒険心ではないだろうか。


 特に我々の業界の参考になるかもしれないのは、「日本一のホラ吹き男」


日本一のホラ吹き男 [DVD]

日本一のホラ吹き男 [DVD]


 松下電器をモチーフにしたと思われる。「増益電機」の入社試験に落ちた主人公、初等(はじめひとし)は、大学の同期で合格した友人に「おれも春から増益電機で働くんだ」とホラを吹く。いざ入社初日、友人が見たのは警備員として入社した初等だった。


 「おまえ、大学まで出て警備員はないだろう」


 「なあに、警備員だって増益電機から給料を貰ってるのと同じさ。それにな、社長に気に入ってもらえる一番いいポジションだよ。君ぃ」


 「正社員が一万人もいる会社で、社長が警備員にまで目が行くかよ」


 ところが初等はあっさりと正社員に、係長に、そして課長に昇進してしまう。すべて計算通り。でもそこに「蘇る金狼」のような陰気さは一切ない。とにかく能天気。


 この頃のクレイジー映画はセリフのキレがいい。植木等の演技もいい。なによりいいのは彼の笑い声だ。
 彼の笑い声を聞いてるだけでポジティブな気持ちになってくる。


 ちなみにクレイジー・キャッツの代表曲の多くの作詞は青島幸男(元都知事)が手がけている。
 無責任なうたを作りまくって、意地悪ばあさんやって、最後は都知事だもんな。まるきりクレイジー映画の主人公じゃないか。


 見たことない人はぜひ見て欲しい
 

クレージーキャッツ 日本一ボックス [DVD]

クレージーキャッツ 日本一ボックス [DVD]