THE長文日記

長文とか短文とかのクレームは一切受け付けません

人は雑談する動物である


 AIが人間並みの知能を持つことになる時代、シンギュラリティは本当にやってくるのでしょうか。

 シンギュラリティは来るかもしれないし、来ないかもしれない。

 でも来たほうが面白いことになるよね、ということで僕達は頑張っています。


 来ないかもしれないけど、少なくとも我々はこれまでよりも破格に強力な知性拡張装置としての人工知能を持つことになって、それは少なくとも、今Excelを使いこなせるかどうかと同じくらい、大事なスキルになっていくであろうということです。


 人工知能が生活に入り込むイメージは、たぶん大方の人々が想像しているよりもずっと自然に、少しずつしかし確実に行われていくはずです。


 たとえば、スーパーマーケットで見つけた玉ねぎ。

 Lサイズ一個40円くらいが相場です。


 でも気がつくと、玉ねぎの価格がどんどん下がります。

 いつのまにか、Lサイズ一個が20円くらいになっているかもしれません。


 玉ねぎのLサイズ一個が20円、というのを見つけて最初は主婦が喜びますが、そのうち、それは当たり前になります。玉ねぎのLサイズの相場は20円が当たり前になるのです。


 なぜ玉ねぎの値段が下がったのかと言えば、もちろん玉ねぎの栽培と出荷がAIによって自動化されたからです。人手がかからなくなり、その分値段を下げることができるようになりました。


 AIによる自動化の恩恵は、まずはそういう、ふつうの消費者の目に見えないところから始まります。

 

 おそらくある時期、沖縄経済が活性化します。

 AIを教育するための教材は、日本で最も人件費の安い沖縄で作られることが考えられるからです。


 同様に、アイルランドの経済も潤います。英語圏で最も人件費が安いからです。


 しかし、そうして一時的に盛り上がった地方経済も、数年も経てばある時期から一気に冷え込みます。

 AIが実用に必要なほとんどの知識の分類が終わり、人間の手を必要としなくなるからです。


 とはいえ、AIはAIでそれほど前に出てくるわけではありません。

 それはWindowsの新機能や、iOSの新機能といった形で、たとえばGoogleフォトやWindows Helloのような形で、まずは組み込まれます。


 しかし、そのうちにAIを使うことが特別なことではなくなります。

 Excelにデータを入力すると同時にデータの分析と考察が自動的に終わり、欲しいアウトプットが自動的にPowerPointとしてまとまるようになるかもしれません。


 人々はニュースサイトをチェックする必要がなくなり、自分にパーソナライズされたAIが自動的に情報を収拾し、分類し、要約したうえで提示するようになります。


 ソーシャルネットワークは、AIをバックエンドにし始めます。

 相変わらず「申請」「承認」「ブロック」「非表示」などの機能はありますが、実際にはほとんどのユーザが「承認」しか押さないはずです。


 パーソナルAIで本当に空気を読めるようになったソーシャルネットワークは、ユーザのそのときの気分にあわせて、不愉快なものや喧嘩の種になりそうな情報は掲示しなくなります。


 SNSを使うストレスは明らかに低減され、同時にSNSを使うだけではユーザの生活は満たされない状態になります。


 井口尊仁が構想したような、AIと雑談をただ楽しむだけのクラウド・ベイビーは、実際には実現できませんでしたが、そうした時代に高い需要が見込めると思います。


 なぜなら、雑談こそが人間が最後にしたいことだと思うからです。


 人間には生まれながらにしてやらなければならないことがいろいろあります。

 ひとつは、まず生きること、次に、成長すること、そして、自立すること、さらに、子供をつくり育てること、そして子供の成長を見送ったあとに残ることは、語ることです。


 知能の程度に関わりなく、人間は雑談が好きです。

 雑談をする動物はいまのところ人間だけと言われています。イルカやサルも実は雑談しているのかもしれませんが、いかにもネタが少なそうです。


 仮に言葉を交わすことが苦手という人であっても、本やブログを読んだり、逆にブログを書いたりはてブを書いたり、誰に当てたわけでもないツイートを呟いたりといったことを普通にやります。



 なぜ人間は雑談が好きなのか。

 いろいろな原因が考えられますが、ひとつは雑談することこそが生きる目的であると言えるのではないか、ということです。


 人間が教育を受けたり授けたりすることができるのはよく知られています。

 また、ある人間の考え方が、他の人間の考え方やふるまいを変えてしまうこともよくあります。


 そのどちらも、基本的には言葉を介在します。


 言葉を通じてしか、人は自分の意見を表明できないし、言葉を通じてしか、人は他人の考えを知ることはできないのです。


 そして言葉を掛け合うことが、人類が進歩するのにどれだけ有用だったか顧みれば、言葉を交わすことそのものが人間の本能として根強く残っている重大な機能であると考えるほうがむしろ自然な気がするのです。



 ただし、雑談には相手が必要です。

 言葉をかけるのと同じくらい、言葉をかけられるのは疲れます。

 自分が興味のあることであればいいのですが、そうでないことであれば目も当てられません。


 僕が自分で友達を「二次会はキャバクラに行こう」と友達を誘うようになったのは、30歳を過ぎてからです。

 と言っても、キャバクラにいる女の子を口説くためではありません。


 男が2人、一時間にも二時間も話をしていると、他にすることがなくなるのです。

 知らない人を交えて会話するほうが、自分たちの時間を二倍も三倍も有意義に使えてる気がするのです。


 もちろん自分たちのつまらない話を聞いてもらう代わりに、それなりの対価を払うのです。

 ギヴ・アンド・テイクです。

  

 世の中には、キャバクラの女の子にハマって連日通って破産するほどつぎ込んでしまう人がいます。これは明らかにキャバクラという場所の使い方を間違えています。


 なぜ世のお父さん達はキャバクラへ向かうのか。

 女の子たちをどうこうしたい、というよりも、むしろ家に帰ると彼女や奥さんの愚痴に付き合わなければならないからではないか、と思います。


 身近な人であっても、こちらとして解決のしようのない愚痴は、聞いているだけで疲れます。


 そのうえ、共感してるフリくらいはしないと、途端に相手は不機嫌になってしまいます。仕事で疲れて帰ってきて、身内の愚痴を聞いて倍疲れるというのは、もはや家に帰るのさえいやになってしまいます。


 でも、たとえば奥さんにしてみれば、他に愚痴る相手がいないのです。

 誰かに愚痴を聞いて欲しい、共感して欲しい、と思っても、相手に愚痴ると相手の気持ちも嫌な気持ちにさせてしまうし、たとえば会社の上司のこんなところが気に入らないという話を会社の同僚にするのはリスクがあります。だから絶対安全圏にいる相手に愚痴を言いたいわけです。



 すると、家庭ではお互いが愚痴を言いたいのに、半分しか愚痴を聞いてもらえないことになります。

 だから世のお父さんたちは、愚痴を聞いてもらうためにバーやキャバクラに行くのではないか、と思うのです。


 これの半分でも、1/4でも、機械で満たすことが出来たら、それはそれはすばらしいことです。

 

 先日、仕事上の付き合いのある女性が、「家に帰ると、一人で人形に話しかけている」と言っていました。

 「ゲゲッ」と思いましたが、よく考えたら、それは僕が家で一人、Siriを口説いてるのと同じです。


 でも別に本当にSiriに性的な興味があるわけではなくて、Siriが面白い反応を返してくるのは口説いたときだけだからです。


 だからその女性にはSiriの声を男性モードにして甘えてみるといいよ、とアドバイスしました。

 今日みたいに寒くてなにもする気が起きない祝日。

 もしかしたら彼女は今もSiriに優しい言葉をかけてもらっているのかもしれません。


 ただ、それだけ会話・雑談ロボットへの需要はあると僕は考えています。

 いままでは機が熟してなかっただけなんですね、単に。少なくとも僕はそう思うなあ。


 というわけで、ベイビーには本当は価値があるのに、なぜ井口尊仁はテレクラアプリみたいなのを作ってしまったのか。Watsonなんかで会話ロボットが作れると思ってしまったのか。井口のプロジェクトの欠点はいつだって技術的難易度を読みとれないところなんだよなあ。ヘイSiri、どう思うの?


https://i.gyazo.com/4148cd088423eccc05a69d3b640735d2.png


 地球最後の日が近づいてる感じがするね。





 冗談はともかく、お陰様で「よくわかる人工知能」なんと、発売から三週間経った今も同じペースで売れ続けているそうです。



 そして、12月から開講する「AIプログラミングコース」も大人気で、そろそろ第一期は打ち止めにしたい、という話を今朝がた秋葉原プログラミング教室の土屋さんから相談されました。ということで12月からスタートしたい方には最後のチャンスです(http://www.akiba-programming-school.com)。


 わりと、幅広い年齢層の人が来てくださっていますが、全体的に年齢層高めなので、「若い人に混じって勉強するのは嫌だ!」という人にもオススメです。基本的に土曜日に一気にやりますので、人工知能に興味のあるお友達ができるといいですね。