THE長文日記

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【本日発売】よくわかる人工知能【Kindle版も】

 お待たせしました。

 新刊「よくわかる人工知能 最先端の人だけが知っているディープラーニングのひみつ」が本日発売になります。


 なお、Kindle版も同時発売ということで、既にお買い求めいただくことができるようになっています。



 先に行っておきますが、この本、かなりの奇書です。

 クチの悪い部下に言わせると「人工知能界最大の奇書」なんだそうです。確かに、色々な意味で普通の本ではありません。


 本書は、当初は人工知能に関わる様々な最先端の方々とのインタビューと描き下ろしの解説を半々にして構成しようとしていました。


 ところが実際にインタビューに行ってみると、あまりにも最先端で活躍する方々が先を行き過ぎていて、「これは通り一遍の解説とインタビューを置くだけでは到底誰にもインタビュー内容が理解できないだろう」という危惧がありました。



 本書には8人の有識者がでてきます。


 昨年、大ベストセラーとなった「人工知能は人間を超えるか」の著者である松尾豊先生を始めとして、トヨタNVIDIA、YahooJapanといった人工知能ビジネスの最先端に関わる人々、それから、脳科学やロボット工学の先生方、ドワンゴ人工知能研究所の山川所長と、ベンチャーでありながらスーパーコンピューターの世界ランキングで1~3位を独占するという快挙を成し遂げたPEZY Computingの齊藤社長などです。


 どの方々もそれぞれ超一流の見識を持ち、実際にビジネスや研究に邁進されているので、通り一遍のヌルい説明では終わりません。


 彼らの言っていることを理解するためにインタビュー後に編集の伊藤くんと復習したりだとか、追加で僕自身も勉強しなければならなかったりということが沢山ありました。


 これをそのまま載せたとしても、到底読者の方はついてこれないでしょう。僕自身ついていけない部分が多々あったからです。


 そこで、今回は敢えて難しい構成にチャレンジしました。

 インタビューと解説を完全に分離するのではなく、解説を先に行い、インタビューを間に挟むことで最先端の人たちが言っていること、考えていることができるだけわかりやすくなるように構成したのです。


 この構成を提案すると編集の伊藤くんは「いや、それ無茶苦茶書くのが難しくなるよ」と難色を示しました。まあとにかく本を書くとなると遅筆になる僕のことですから、それを警戒したのでしょう。


 実際、インタビューは6月中までに終わったものの、復習と再構成で実際に原稿が上がったのは9月まで掛かってしまいました。


 周囲のいろいろな人に下読みしてもらい、わかりにくいところ、ついていけないところを指摘していただき、用語解説を要所要所に挟んだり、本筋と関係ないのに煩雑に感じられそうな部分は大胆に切ったりして、伊藤くんとまさしく二人三脚でああでもないこうでもないと完成に向かって仕上げていった本です。


 タイトルも揉めに揉めて、最終的には仮タイトルだった「よくわかる人工知能」になりました。

 タイトルは最後まで揉めていたと言っても過言ではありません。


 なぜタイトルで揉めたのかというと、人工知能に関してここまで様々な点からポジティブな可能性を指摘した本はかつてなかったからです。


 なぜか、昨年の人工知能本ブームのときは、とにかく人工知能ができたら人類は滅ぶんだという論調が一般的で、タイトルも、そういうものが少なくありませんでした。



 「ノストラダムスの大予言」じゃないけど、ホーキング博士イーロン・マスクが懸念を示していることから、殊更に不安を煽るようなタイトルの本が大量に登場してさすがに食傷気味でした。


 そうしたなかで、今年に入ってから、少しずつポジティブなスタンスの本も出てくるようになりました。


 当たり前ですが実際に人工知能をやっている人はそれが人類を滅ぼすとは思っていません。


 人工知能によって積極的に人類が滅ぼされるというよりも、ひょっとすると人類よりも長生きする人工知能が生まれるかもしれない、くらいには考えています。


 人類の寿命はあと何億年でしょうか。

 天変地異や惑星衝突、氷河期の到来によって人類が滅亡する可能性は、人工知能によって人類が滅亡する可能性よりもずっと高いと考えられます。人工知能の進化は予測不能ですが、天変地異は確実にやってくるからです。


 我々が地球というちっぽけな惑星にへばりついている以上は天変地異による滅亡から逃れる術はありません。

 だからこそ、いずれ宇宙移民は本気で考えなければならない話題になるはずで、事実、それをテーマとしたフィクションや論文は山ほどあります。


 しかしそれを実現するには、我々人類の持つ知能だけでは難しすぎるかもしれません。宇宙開発には膨大なエネルギーが必要です。単純労働に人が割かれ、不毛な戦争に人類が明け暮れている現代では宇宙移民など夢のまた夢です。


 そうした停滞する状況を打破するのは、人工知能かもしれません。

 


 万が一、人工知能が期待通りの働きをしなかったとしても、あるレベルまで人工知能を進化させることができれば、人類ではなく人工知能を宇宙に送り出し、我々人類が存在したという痕跡を宇宙に残すことが出来ます。これもひとつの人類の生存戦略と言えなくもないでしょう。


 そういえば「みずは無間」は、そんなイメージの小説でした。人格をコピーした惑星探査機が何千年も宇宙を漂流する話です。

みずは無間 (ハヤカワ文庫JA)

みずは無間 (ハヤカワ文庫JA)



 もっと身近な話でいえば、人工知能に日本が滅ぼされるよりも、東京に直下型大地震が起きて死ぬ確率のほうがいまのところ遥かに高いわけです。そして大地震の到来を予測できる人間は居ません。「来るだろう」と言っていればいずれ来るのが大地震です。


 言ってみれば「そろそろ大地震が来るだろうけどいつ来るのか、どう来るのか、どう対策すればいいのかわからない場所に首都を作って人々は潜在的恐怖に怯えながら暮らしている」というディストピアが今の東京であり、今の人類の知能の限界とも言えるのです。


 しかしもしかしたら、人工知能ならば地震の原因を特定し、途方もないアイデアで対策を思いつくかもしれません。


 「んなアホな」と思うかもしれませんが、そもそも人類最難関の囲碁というゲームで人工知能は「途方もないアイデア」によって勝利しているのです。それが天変地異の予測や予防という領域で活躍できないと、言い切るのは難しいでしょう。


 もちろん今の人工知能に「お願い、地震の原因を教えて」と聞いても意味のあることは答えてくれません。しかしそれでも、科学的発見を得るために人工知能を活用するべきという考え方はごく自然なものであり、最先端の科学者は人工知能を文字通り自分の手足のように駆使しながら目の前の問題に適用し、成果を上げる必要があります。既に地質学の世界では深層学習で石油探査を行うなどの実験が、シェルとMITの共同研究として行われ、成果を見せ始めています。

 

 現代の人工知能の進化というのは恐ろしく急激で、残念ながら今日発売のこの本も、話題としては少し古い内容になってしまっています。それほどまでに人工知能の進化は苛烈なのです。


 もともと本書を書いていく上で、出版した頃には内容が古くなっていることはもはや覚悟していました。

 そこで、むしろ人工知能の「いま」だけに注目するだけでなく、「これから」に注目して、これから何を研究するべきか、どういう方向へ発展していくのか、そして最後に人工知能はなにを我々にもたらしてくれるのか、といったことを中心に取材していくことにしました。


 その意味では、技術情報の最新動向としては本書は僕のブログを含めてネット上の情報よりもやや古い(一ヶ月程度古い)内容にはなっているのですが、そこで語られている研究の方向性や発展の可能性といった「未来」についての話は、おそらく今後数年間、ひょっとすると10年、20年経っても錆びない話になっているのではないかと思います。


 ややネタバレ気味になりますが、後半でさまざまな有識者から語られる「人工知能のこれから」は非常に興味深い内容になっています。人工知能は意識を持つのか、生理周期を持つべきなのか、それは実装可能か、シンギュラリティを起こすには何が必要か。などなど、途方もないテーマについて大真面目に議論されています。特に最終章は圧巻です。人類の進むべき方向性、人工知能が決して人類の敵ではなく、むしろ受け入れるべき進化の形態であるという可能性を示唆しています。


 そういう意味で、前半は恐ろしく地に足の着いた「いまの人工知能」について語られ、後半はもはやノストラダムスの大予言というか、ひょっとすると50年くらい先に読み返して「あ、ほんとうにこんな感じに進化しちゃったね、僕達」と思っちゃうかもしれません。


 そういう意味で、やはり奇書なのでしょう。


http://peatix.com.new.s3.amazonaws.com/event/205294/cover-J53PjOy9aT0kkgof2rmWKhksaYL4WEMi.jpeg


 そしてアスキーチャンネルでニコ生もやります。

教育はどう変わる?よくわかる人工知能セミナー - 2016/10/17 19:00開始 - ニコニコ生放送

http://live.nicovideo.jp/watch/lv278898731


 前半は僕の方から、本に間に合わなかった最先端の人工知能の動向について解説させていただき、後半は品川女子学院の漆志穂子校長先生と対談させていただきます。


 というわけでようやく発売できました。

 「よくわかる人工知能


 Kindle版もよろしくお願いいたします。