THE長文日記

長文とか短文とかのクレームは一切受け付けません

築地、吉野家一号店

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 東銀座にあるドワンゴに通うようになって嬉しいのは、築地に歩いていけることだ。


 時間の空いた時などに頻繁に築地に行く築地フリークとしては、ランチに気軽に築地に立ち寄れるのはなにより嬉しい。まあちょっと歩くけどさ。


 築地といえば、場内ではとんかつ八千代のC定食、カレーの中栄、寿司大などが有名だが、一度も訪れたことがないけど実は気になっていた店がある。


 吉野家一号店だ。


 それまでは「わざわざ築地までやってきて吉野家?」という疑問に答えることが出来ず、しかも築地までわざわざ来る時はたいてい、誰かと一緒だから、同伴者の同意もなかなか得られずトライできなかった。


 というわけでついにぶらりとランチにひとりで築地の吉野家一号店に来れた。


 吉野家は大好きで、炭水化物ダイエットをしていても、月に一度くらいはご飯軽めのアタマ大盛り(肉増し)で食べるほどだった。


 普段行く御茶ノ水吉野家はしかしひたすら、ふつうの吉野家で、往年の吉野家コピペみたいな殺伐とした雰囲気もなく、みんな気軽に豚丼やカレーなんかを注文して、夕方にもなれば吉飲みで近所のサラリーマンがほろ酔い加減で談笑する、ファミレスとモンテローザ悪魔合体したかのような和気あいあい、酒池肉林の雰囲気だ。


 果たして、ランチとしてはやや早めの午前11時頃に吉野家一号店に入ると、一癖も二癖もありそうないい雰囲気を醸しだしたオヤジが無言で飯を書き込んでいた。


 ピリッとした空気。

 これか。


 これが吉野家かッ


 初の一号店体験で注文を迷っている間に、向かい側の客はめまぐるしく入れ替わり、いかにも市場関係者といった出で立ちの紳士が現れて「ネギダクダク。ツメシロ」とぶっきらぼうに言い、まるで機械のような素早さで現れたその丼をやはり無言でかきこんでいた。


 僕は迫力に圧倒されながらも、「アタマ大盛り」としか言うことができない。

 ものの数秒で現れた牛丼はご飯が熱い。炊きたてだ。


 回転が速いからだ。


 しまったこれではかきこむことができない。

 ツメシロとは、冷たいご飯のことを言うらしい。そっちのほうが早く食えるのは道理である。

 ネギダク、ツユダクにするのはやはりそのほうが早く食えるから。もはや流動食である。


 心なしか普段食べる吉野家より美味く感じる。


 僕がアツアツのご飯に目を白黒させている間にも次々と客が入れ替わる。

 まるで地獄の激戦区だ。


 エリア88の戦闘機がエンジンを切らないまま給油してすぐスクランブル発進して行くかのよう。

 ここは戦う男たちの給油所。余分なものはいらない。速い、安い、美味い・・・そうした吉野家の精神はここで生まれたのだ。


 殺伐

 ・・・たしかに殺伐としている。


 だが確かに感じる、男たちの息吹。


 向かいにまた新しい客、いかにもクセモノ然とした、百戦錬磨の勝負師といった感じ。手慣れた感じで注文を済ませるとやはりツユダクダクのツメシロをかきこむ。


 一瞬目があって、鋭い眼光に「兄ちゃん、モタモタ食ってるとここ(築地)じゃ生きていけないぜ」と言われた気がして、慌ててアツアツの飯をかきこんだ。噎せた。


 会計を済ませて店を出ると、寿司大の行列が目に飛び込んできた。

 観光客はいつも寿司大に並んでいる。


 もっと旨いものは、そこいらに沢山あるのに。


 観光客で湧く築地の中にあって吉野家は、いぶし銀のようだ。


 プロのための店。

 戦う男たちの補給基地。

 地獄の最前線、エリア88


 今日もここで戦う、ターレーの男たちが居る。


 東京のすべての食事はここからはじまるのだ。

 朝早くから戦う彼らのような男たちがいるからこそ、僕達はレストランでうまい飯が食える。オリンピックで格安にハンバーグが買える。


 食事を支えるというのは、東京を支えているというのと実質的に同じことだ。人は何も喰わなくては生きていけない。


 彼らが闘い、今日も東京の一日が始まる。

 その背中は自信に満ち、頼もしく、格好いい。


 「チッ観光客が」と思ってるだろうなあと思いながらも、やはり憧れてしまう。


 そんな男たちに敬意と羨望の眼差しを送りながら、僕は会社に戻る。

 丸武の卵焼きを食いながら