THE長文日記

長文とか短文とかのクレームは一切受け付けません

本当に美味い和牛の作り方  ~格之進はなぜ和牛一頭買いに拘るのか

 二日目。

 出社と同時に雪かき。

http://gyazo.com/83272f1c7d08aba5da392963f4a8f0f7.png


 社員総出で雪かきをしているのに混じって、僕も雪かきをさせていただきました。

 僕も雪国生まれ。スノーダンプの使い方はお手のものです。


 しかし普段使わない筋肉を使って「こりゃダイエットにもいいわい。ウッシッシ」と思いながらやりました。長岡にいるあいださして太らなかったのは雪かきのおかげか!そういえば長岡にはすごいデブって居ない気がするぜ。


 今日はいよいよ処理場に入って、肉を部位ごとに捌くという貴重な体験をさせていただきました。

 これで僕も肉職人の仲間入りだ(嘘ですごめんなさい)。


http://gyazo.com/457a929bcd7fc9e0f83a1440cfef0247.png


 朝はまずハンバーグ作り。

 実は格之進のハンバーグは東京の超老舗の某超有名超高級店にOEMされてる。それだけ美味いってことだね。格之進の肉はレベルが違うと感じた僕の舌に狂いはなかった。


 もうひたすら、ハンバーグを作りまくる。

 

http://gyazo.com/548878aafa18423a96737ea2ef866e56.png


 ポンポンと丸めて、型に入れる。この大きさ、そして程よい形。なにもかも計算されてる。


 「機械ではなく、人間が手で丸めると、体温で表面の脂が溶けていい感じで全体にコーティングされるんですよ」


 格之進のハンバーグはOEM供給を含めると月産1万個。大人気商品だ。


 さあそしていよいよ、肉を捌く!今日はカタ、バラ、モモ、そして豚モツを捌くことに。

http://gyazo.com/1741a6e749f5ac0c2e5d71309f728604.png


 うおおおっド迫力!!これが肉だ!

 まさしく、肉だ。肉の化身だッ!


 さすがに素人の僕が捌いた肉を格之進のような高級店では使えないので、今回は練習用(というと牛に失礼だが)に用意してくれた安い経産牛でトライッ!


http://gyazo.com/5c42ed2df1ee020e58b9ca3c90244199.png


 こいつがいわゆるひとつのバラ部分。

 骨とくっついていた部分、通称ゲタカルビにまずはトライ!

 上方向に肉を引っ張りながら、水平から一度ほど上に傾けたスジ切り包丁を当てていく。切るというよりは「当てる」というイメージだとズルズル行く。


http://gyazo.com/71182fc5e03983251079eb526e9d8adc.png

 次に、肉についた余分な脂を切り落としていく。

 この作業を「磨く」と呼ぶ。

 「その肉、磨いといて」と言われれば、要するに肉についた白い脂を取ってくれ、という意味になるのだ。ためになるね。


 これがなかなか難しい。

 どこまで磨けばいいのか、その見極めの難しさもさることながら、細かく磨き残しが残ってそこを磨こうとするとすぐ指を切りそうになる。肉きり包丁っていうくらいだから、指なんかスパッと簡単に切れる。


http://gyazo.com/d661c820493ca8138f306af4513c4d97.png


 磨き上がると「おお、これスーパーマーケットの肉屋で見るやつだ」という肉塊が登場する。

 すげえ!こうなっていたのか!!


 千葉社長はやっぱ当たり前だがスゲー上手い。

 この、肉をどこまで使うか、というのが非常に重要なテクニックで、高級な牛ほど慎重にやらなければならない。

http://gyazo.com/a40ce6828b18a2037966f1c38570542d.png


 さらに「左がイチボ、右がランプ、重なっているからイチボとランプを分けてみて」


 というミッションが。

 これがまた難しい。

 指を突っ込んで、スジをブツブツと切っていくんだけど、どうも思い通りの形にならない。


 切りながら肉の完成形を頭にイメージできるようにならないとなかなか難しい。

 つまり、その部位の肉はどんな形をしているか、ということを三次元的に頭にイメージしながら、彫刻を削りだすが如く適切に刃を入れて行かないと無駄な肉になってしまう。


 今回、思ったのは、同じ脂でも、各部位によってぜんぜん柔らかさや冷たさ、溶け始める温度が違うところ。

 やはり高級な部位になれば脂は溶けやすく、「たべたら美味いだろうな」というイメージを得られるのに対し、ほとんど捨てる部分に関しては「こりゃ胸焼けしそうだ」というのが指から伝わってくる。


 「同じカルビでも店によって味がぜんぜん違うのは、どの部位を"カルビ"として出すか、という店のセンスに掛かってるんだよ」


 という言葉にはなるほど説得力がある。


 何度か指先を切り落としそうになりながらも、懸命に「磨いて」行く。

 

 肉には歩留まりがあり、4.8キロのバラ肉を、食べれないところを捨てたらわずか1.8キロに、9.3キロのブリスケットを磨いたら、4.1キロに。だいたい、半分になってしまう。下手くそがやると、さらに歩留まりが下がる。


 肉の等級として、A4とかA5とかがあるんだけど、実はこの「A」というのは美味しさの基準ではなく歩留まりの基準。だいたい70%が使えるのがAランク牛、60%くらいのがBランク牛、それ未満がCランク牛と分けられる。


 普通の黒毛和牛はすべてAランクになるらしい。


 しかし歩留まりがいいということが、必ずしも美味しさと直結するわけではない。

 さらに、5とか4とかの数字は、これまた味に関係なくBMS(ビーフマーベラス・スタンダード)という基準で、これは肉にどのくらいサシ(脂)が入っているか、という基準でしかない。


 つまり、Aにも5にも「その肉が美味しい」という基準は全く入っていないのだ。


 なのに「うちの店の牛はA5ランクですから」と自慢するのはちょっとマヌケに見える。


 あくまで生産者、飲食店側の都合であり、美味しさの基準とは関係ないのだ。


 なぜこうなってしまったかというと、肉屋が商店街の対面販売ではなく、スーパーマーケットで流通するようになってしまったから、というのが千葉さんの説だ。


 本当は美味しい赤身肉よりも、見た目はサシが綺麗に入ってピンク色の霜降り肉のほうが美味しそうに見える。


 実際、霜降り肉って、食べてみると脂っこくて必ずしも美味しいとは言えないと思うし、霜降りステーキが高級なんて、完全に昭和の価値観だと僕は思う。


 けれども確かにスーパーマーケットに並んだ肉を見ると、霜降り肉は高価だし、美味しそうに見えてしまう。


 昔はそれを肉屋が対面であれこれ調理法やお客さんの状況までをも考えながら提案していたのが、スーパーマーケットによってディスコミュニケーションになってしまい、結局「高く売れるのは霜降り肉」ということになってしまった結果、BMSが高いA5牛の値段が上がっていったわけだ。



 となると、肉の生産者としては、できるだけBMSが高く、しかも重い(重いということは値段が高いということになる)、そして早く育つ牛を作るのが一番儲かるということになる。


 もはや「美味い肉を作る」のが目的ではなく、「高く売れる牛を作る」ことが目的になっているのだ。



 ところで格之進はどうかというと、実は全く真逆の考え方を持っている。


 100kgの牛が、例えばダイエットして60kgまで減ったとする。

 そのとき、牛の細胞は40%減ったと言えるだろうか。


 答えはNo。体重は上限しても、細胞そのものは増減しない。

 ということは、100kgの牛と60kgの牛で細胞数がほぼ同じということになる。


 では細胞が多いとなにが嬉しいか、細胞が細かくなるのだ。

 この細胞の細かさが、口当たりの良さや肉の柔らかさにつながる。


 たとえばビーズクッションを思い浮かべて欲しい。


 大きめのビーズが入ったビーズクッションと、小さく細かいビーズが入ったビーズクッションでは、同じ大きさなら細かいビーズクッションの方が柔軟性がある。プログラマー的に言えば、解像度が高くなる。


 肉は一般的に筋繊維が細いほうが美味い。

 だから雄牛や経産牛のように、筋肉を酷使して太くなった肉は筋張って美味しくないのだ。


 和牛は右利きが多く、したがって右半身よりも左半身のほうが若干は味が上になるという話もある。


 そこで格之進は、本当に美味しい肉をサーブするために敢えてBMSを求めず、しかも重量の小さい牛を一頭買いしている。


 格之進の肉はスーパーマーケットで並べて売るのではなく、あくまでも肉を知る人達に格之進流の「美味しい食べ方」を加えて提供するというポリシーだからだ。


 加えて千葉社長は言う。


 「儲かる部位だけを買ってきて、さあ美味しいお肉ですよ、と提供するのは、商売として正しいかもしれない。けれども、それは牛の命をわけて生かされていく我々人間にとって、牛に失礼なのではないかと思う。だから僕は一頭買いに拘りたい。そして一頭の牛の全部。本当に全部の部位をまるごと使って、そのままでは食べづらいところはミンチにして美味しいハンバーグにして、牛のあらゆる部分をまるごと頂いて、それで初めて、牛さん美味しいお肉をありがとうございました、と感謝の意を伝えられるのではないか。それが僕の考える格之進の姿なんだよね」


 確かに、僕らは肉だと思っているけど、実際にはあれは牛の死体である。

 死体を粗末にする動物は人間でなくても軽蔑される。


 ならばせめてもの供養として、牛一頭を余すところなく使おう、敢えて効率の悪いことに挑戦しよう。それが格之進の哲学なのだ。


 焼き肉ひとつ、ハンバーグひとつにこれほどまでに集中し、考え、食べさせてくれる。

 今回の旅で格之進が益々好きになった。


 仕事中、お客さんの一人が「店主と話がしたい」と言ってきて、「面倒なお客さんもいるものだな」と思ったのだが、駐車場を見るとウン千万はする超高級車が止まっていて、「なんだ、なぜこんな岩手の山奥にこんな高級車が???」と思うと、実は県外の超名門鉄板焼き屋さんの社長だという。


 アポもとらずにやってきて、ハンバーグとステーキを注文してからあらためて店主に肉の話が聞きたいと言ってくるあたり、シブい。


 格之進の評判を聞いて、実力を測ってみようと思ってやってきたのかもしれない。

 凄いなー、それ。そういう話は本当にあるんだねえ。


 ニコ生では、格之進の千葉社長が語る肉の成り立ちと、「秘伝!超美味しいハンバーグの焼き方!」も公開したよ。


http://gyazo.com/b877470fcab076cc6635a96a4903e7c5.png

ぶらり岩手肉修行 vol.2 美味しいお肉と儲かる肉の作り方の違い - 2015/01/31 16:00開始 - ニコニコ生放送

http://live.nicovideo.jp/gate/lv208647864

 

 「肉は対流を意識して焼け!!」


 千葉社長直伝、必殺、3次元ハンバーグと、塊肉の焼き方は本当に必見。

 ハンバーグ、いつ食ってもうまいわ~


 そして気づいたけどAmazonでも買える!

 格之進で売ってる肉はすべて45日の熟成肉!

 薄切りの焼肉用セットならご家庭のホットプレートでも美味しくいただけます。

 千葉ちゃんのアツい想いが込められた本当に美味しい熟成肉をぜひ召し上がれ