THE長文日記

長文とか短文とかのクレームは一切受け付けません

肉を学ぶ

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 予告通り肉修行のために休暇をとって岩手県一関市までやってきた。

 親友の千葉ちゃんの野望の総本山、格之進の本店で肉の真髄を学ぶためだ。


 なあんでこんなことをやってるのかと言うと、まだ見ぬ世界を知るためだ。


 ギョーカイ用語では、こういう一見本業となんの関係もないところに出かけて行って、新しいインプットを得ることをシナリオ・ハンティング、略してシナハンと言う。


 バブル期の電通では、世界地図にダーツを投げて、当たったところにとりあえず出かけて行って、それから「こんな場所を舞台にCMを作るとしたら、クライアントはどこだろう?」と考え、そこからプレゼンまで持っていくやり方をしていた。だから90年代のCMというのはとことんダイナミックだったという。


 東京で暮らして20年。刺激の多い街ではあるけれども、休日を過ごすといえば知っているお店や知っている景色ばかり。毎年海外出張していたけれども、それだって行く先はある程度は固定されてしまう。サンフランシスコ、ロサンゼルス、ラスベガス、オースティン、ヒューストン、ニューヨーク、バルセロナカルカソンヌマルセイユ、パリ、アヴィニヨン、ローマ、ベネツィア、ロンドン、パタヤストックホルム、ウィスビー・・・etc.


 用事がなければでかけない、ということであればこれしか仕方ない。

 しかし、去年、中東とアフリカでenchant.jsを教えてくれと言われた時に行かなくてよかった。


 外務省のページ見ると「アルカイーダの支配地域なのでできれば渡航しないで」と書いてある地域ばっかりだったので断ったんだけど、行ったらどうなってたんだろう。


 後藤さんじゃなくて僕が拘束されていた可能性もあるしなー。



 海外もいいんだけど、日本だって僕は知り尽くしているというわけではない。

 また、観光客の目線で出かけるというよりは、知らない世界で働く人々の目線を獲得することができれば、僕はもっと自分の世界を広げることができる。


 そう考えると、とりあえず身近なところからと千葉さんに無理を行って、肉屋で働かせてもらうことにした。


 肉は、もう散々食ってるんだけど、未だによくしらないことが多い。

 肉を学ぶこと、そして精肉業という業態を学ぶことは僕にとっては自分の知らない世界を知ることに直結するのだ。そのうえ、肉の美味しい食べ方も解って一石二鳥である。


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 然して、東京駅から新幹線で2時間と少し。

 岩手県の格之進本店にやってきた。


 立派な店構えだ。

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 開店前の店内で朝礼に参加。

 偉い人たちからの訓示のあと、「職場の教養」という本を朗読する。

 すげー、朝礼とか初めて参加した。


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 それから精肉課の松橋課長から直々に肉の各部位について座学で講義を受ける。

 大分類、中分類、小分類、細分類まで、実演を交えながら丁寧に教えていただいた。


 肉はカタ、ロース、モモ、バラの4つの大分類に分けられ、そこからさらに細かく分けられていく。

 たとえばロースにはリブロース、サーロイン、ヒレの3つの中分類があり、さらにリブロースはリブロース、カブリ、リブゲタに分けられ、さらにリブ巻き、リブアイ、バラ先・・・という細分類になっていく。


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 これまで僕は、たとえば海外のホテルなどで「リブアイステーキ」というのを食べたことがあったのだけど、リブアイとリブロースの違いがぜんぜんわからなかった。


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 リブロースとは、この断面のことであり、リブアイとはこの断面の中心にある丸い肉の部分で、その上にぐるのと乗るのがリブ巻きで、下を支えるのがバラ先という、骨に直接張り付いた部分であることを知った。


 リブロースは一人前として食べるにはデカすぎるので、ホテルなどで一人前のステーキとして出すときにはバラ先とリブ巻きを取り除いてリブアイステーキとして出すのだという。


 しかし実際にはリブ巻きの部分が美味かったりするので、TボーンステーキやLボーンステーキのように、複数人で食べるときはリブロースをそのまま焼いて出すといろんな部位が楽しめるということになる。


 また、接続部位というのが重要で、たとえばリブロースはカタロースとサーロインに接続される。


 カタロース側に接続されるリブロースと、サーロイン側に接続されるリブロースでは、当然、味が違う。


 当然のことながら牛の身体にハッキリと「ここからリブロース」という境界線があるわけではなく、「このへんがリブロース」「このへんからサーロイン」という感じで滑らかに分けられているので、実際にはリブロースのどの部分なのか、ということが味わいを決定する重要な要素になる。


 これは当たり前だけど重要な視点だった。


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 昼ごはんは配分の違うハンバーグの試食。

 黒毛和牛100%と、黒毛和牛と白金豚の合い挽き、黒毛和牛と普通のブタの合い挽きの三種類と、メンチカツを4種類を試食した。


 それぞれの配分や材料の処理によって味がどう変化するかを実験する。


 格之進では、常にこうした研究開発が行われていて、材料の産地から、加工法、効果的な半分率まで徹底的に研究している。


 個人的には黒毛和牛と白金豚の合い挽きハンバーグが一番美味しく感じられた。

 黒毛和牛100%は、高価ではあるが食感がゴロゴロしてあまり美味しくない。宗教上の理由でブタを食べれない人意外は合い挽きのハンバーグの方がより美味しく食べれるはずだ。こういうのも食べ比べをして初めて解る。


 凄いのは、ソースの類を一切付けないこと。

 また、パンパンになるまでまん丸に焼きあげるテクニックだ。

 ナイフを入れると、ブシャーッと肉汁が吹き出す。

 肉汁だけで充分な旨味があり、ハッキリ行って美味い。


 格之進のハンバーグは通販で買えるので興味があったらこの白格というのをぜひ食べてみていただきたい(http://ec.reservation.jp/kanzakiushi-kakunoshin/products/detail.php?product_id=275)


 しかし試食のつらいところは、一人あたり2.5人前くらい食べないとならないのでものすごくお腹がパンパンになってしまうことだ。


 しかし配分や製法が違うだけでここまで味に違いがでるとは非常に勉強になる。


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 さあ、次は制服に着替えて肉の実地訓練。

 実物の牛肉を見ながら各部位と接続部位の関係性などを学ぶ。


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 格之進では牛を一頭買いした上で、東京の吉澤畜産で熟成させ、バラしたものを納品してもらっている。エダ付き・・・つまり一頭まるごとを骨付きのまま吊るした状態で岩手県に持ってくるのは非常に手間がかかるし、肉への負担も大きい。


 熟成過程はあくまでエダ付きのまま行うが、輸送するときにはバラしてから真空パックで輸送するのが効率的、というわけだ。


 そしてこの各部位の関係性を徹底的に教え込まれる。

 

 だいたい、肉を捌けるようになるのに最低でも一年くらいはかかるという。そらそうだよな。

 一頭100万円だから、無駄なく使わないとすぐに原価率が上がってしまう。肉屋は儲からない、と聞いたけどなるほどそんなに大変なのか、と思った。


 松橋課長は一人ですべての肉を捌くという。

 これは職人芸なのでちょっとやそっとでは真似できない。


 多い時は10日で3トン(!!!!!!)もの肉を捌いたそうな。捌きすぎ。


 その後、ニコ生でちょっとだけ千葉社長の肉講義を聞く。

 今回勉強になったのは、韓国語でいわゆる「カルビ」と呼ばれる部位は、バラの骨についた部分だけだということ。


 しかし多くの焼肉店ではサシ(脂)の入った部分ならなんでも「カルビ」として出してしまうらしい。

 

 かつて焼き肉は、ロースとカルビとホルモンしか存在しなかった。


 しかし一見サシが入っていても、部位が違えばサシの性質もぜんぜん違う。

 部位によって脂の融点さえ違うのだから、カルビと呼ばれる肉の美味さもぜんぜん違うのだ。

 そしてさらに重要だと僕が思ったのは、基本的によく運動する筋肉ほどサシが入りやすいということ。

 動くからには脂肪が入り込む。けれども、脂肪が入っているからといって美味いということにはならない。むしろよく動く筋肉は硬くなりがちなのだ。


 ではどういう肉が美味いのかというと、ヒレがまさにそうなんだけど、 「つられて動く肉」が一番やわらかくて美味い。ということになる。


 ヒレは、背骨の裏側に張り付いていて、基本的に自ら能動的に動いたりはしない。

 他の筋肉の動きによって「つられて動く」のでやわらかくなっている。


 しかし自らが動くわけではないので筋繊維が太くなっておらず、食感も柔らかいままだ。

 

 まだ食肉文化が未熟な頃に「なんでもかんでもカルビ」と呼んでしまう、という風潮が生まれ、正式にはカルビという部位はないにも関わらず、「とりあえずカルビ」が量産された。そしてロースも、しばしばカルビより安いロースというのが発生するようになったが、配分からいってカルビより安いロースというのはあり得ないそうだ。実際、牛半頭分の肉を見てみて、ロースと呼ばれる部位がとても少ないことを振り返っても、たしかにロースの方がカルビより安いというのはあり得ない。カルビとは本来バラ肉であり、どうみてもロースの数倍の面積がある。


 では安いロースとはどのように出現するのかというと、やはり「ここは見た目がロースっぽいからロース」と呼んで適当に出す焼肉屋も少なくないのだそうだ。この、部位をどのように分割し、どこに価値があると分類するか、というのが肉屋さんの値打ちを決めるそうなのだ。


 それって凄いよね。つまり肉屋の成否を決定するのはファシリティや職人芸ではなく、根本的には「どの部位を価値が高いと認め、そして同時に顧客にその価値を認めさせるか」という、ソフトウェアにあるということなのだ。



 その後、ニコ生で少しだけ千葉社長の肉講義を聞くことが出来た。


 まず「和牛とはなにか」という解説から始まり、よく聞く「A5ランク」とか「BMS12」とかが何を意味しているか、という解説まで聞くことが出来た。

 

 今日も午後4時から放送の予定だ。

ぶらり岩手肉修行 vol.2 美味しいお肉と儲かる肉の作り方の違い - 2015/01/31 16:00開始 - ニコニコ生放送

 

 有料会員でなくても見れる無料放送で放送する。

 肉に興味が有る人はぜひ見て欲しい


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 夜は肉の試食会。

 しかし昼のハンバーグとメンチカツ試食会での摂取カロリーが多すぎてぜんぜん腹に入らずあえなく撃沈。


 そのまま一関市内の雰囲気のいいバーに伺って、就寝。