THE長文日記

長文とか短文とかのクレームは一切受け付けません

避暑地の朝

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窓から差し込む朝日で目が覚めた。

いつもよりぐっと柔らかい、グリーン色した日差し。

どこだろう、と一瞬の戸惑いのあと、ああ、いま僕は東京に居ないんだと気付く。

避暑地のペンション。

そういう場所に居る自分がガラじゃなくて可笑しかった。


まったく人生ってのはなにが起きるか解らない。

なぜ僕がこんなところにいるのか。

理由はFacebookだ。


Facebookにはイベント機能というのがある。

それで色んなイベントに誘ったり誘われたりしやすくなった。

週末を過ごすのが苦手な僕にはもってこいの機能だ。



誘われたイベントは誘われないイベントよりも行こうかなと思いやすい。

「女の子は人生ずっと誘われ待ちなのよ」と誰かが言ってたけれど、男だって似たようなものだ。

なにしろ誰かを誘ったりするのは面倒くさいし、断られでもしたら無駄に傷つくしな。


そういう意味ではFacebookのイベントはカジュアルに誘ったり誘われたりできてなかなかいい。

断るのもあまり相手を傷つけない感じでそれがまたいい。

失敗経験のあるIT企業の社長が集まって愚痴る失敗カンファレンス(元ライブドア社長の山崎さんが主宰だ)、地引き網を引く会、経営者向け浴衣着付けレッスン・・・などなど。


どれが一番変わった週末を過ごせるか、と思って選んだのが、長野県の山奥で二泊三日過ごす、という奴だった。


主催者は米澤朋子さん。

本職の研究者だ。今は関西大学で准教授をしてる。


なにかと面白い遊びを教えてくれる人で、彼女の誘いならきっと楽しいだろうと予感する。

金曜日の午後、仕事もそこそこに切り上げて長野県までドライブすることにした。


ところがこれがなかなか苦難の道のりだ。

途中、激しい雷雨で視界が無くなったり、すったもんだあってペンションのある地域まで到着したのが午後八時頃。あたりはすっかり薄暗くなっていた。


さらに困ったのは、場所が全然わからないということ。

Googleマップにもカーナビにも載ってない道をひたすら一軒一軒、調べて行く。


この感覚は軽くARGだ。

電話して道案内してもらうのは簡単だったが、それじゃあ面白くない、と一時間くらいかけてぐるぐる回った挙げ句、ようやく目的地を見つけることができた。


やっとの思いでたどり着くと、食堂で楽しく談笑する人々の姿があった。

中心にいるのは、米澤先生。


集まったのは、年齢も職業もバラバラの人たち。みんな米澤先生以外とは初対面だという。

なるほどこういう趣向で集まって遊ぶのも面白いのかもしれない。


僕は知らない人と話をするのが苦手なんだけど、こうやって知らない人と食卓を囲んでいると、やっと大人っぽい振る舞いをしているような気分になる。


IVSやらなんやら、知らない人と飯を食う機会がそうないわけでもない。

でもそういうのは苦手だった。


なんでだろう、と思ったら、それはそういうときに飯を食う相手が経営者だからかもしれない、と思った。

経営者と経営者。それは根本を突き詰めて行くと決して相容れない相手かも知れない。

本当の意味で経営者が友達になることは少ない。


食卓を囲み、相手の意見に耳を傾けても、心の中で「それは違うだろうな」という思いが常に浮かぶ。

それは当然のことで、経営者というのはそれぞれがそれぞれの主張を持っていなければならないものだし、それが正しい考え方なのかどうかは時間が経たなければわからない。意見が合うことなど滅多にないし、しかも相手の意見に自分が惑わされてはいけない。自分をしっかり持ったまま、相手の意見を聞き、自分の意見を述べる。しかもどうせお互い解り合う気なんかないし、それはお互いに侵されざる領域なのだ。これは緊張する。


まあたぶん失敗カンファレンスに参加していたらまたそういう食卓を囲むことになっただろう。

それはそれで面白いが、今の気分にはちょっと合わない。


それよりは全く利害が関係しない、職業も立場も離れて会話できる相手となにかどうでもいいことをして過ごすほうがずっといい。



食事を済ませると、米澤先生が「みんなで楽器を弾きましょう」と言ってぞろぞろと楽器を出して来た。

大阪からロードスターに積めるだけの楽器を積み込んで来たのだという。


僕は楽器と言うやつが苦手で、まあちゃんと弾けたことは一度もない。

まあでもこういう「出来ないことをやってみる」というのもいいかと思って、ピアノでコードを弾いてみたが、うん、できない。


米澤先生は三線、他の人はウクレレやタンバリンを持ってもう音合わせしてる。すげえな。これが教養ってやつか。


課題曲はサザンの「真夏の果実」で、なかなかの名曲なんだけどコード進行が初心者向きじゃない。

なんどか挑戦して、こりゃ無理だ、と思った。


悔しいので、なにか方法がないか考えてみると・・・あった。とっておきの方法が。


iPhoneだ。

iPhoneの楽器なら僕でも弾けるかも知れない。

それでYudoのピアノマンを探したら、案の定、サザンオールスターズの楽曲が入ったものがあった。

さすが南雲さん。ぬかりがない。


しかも7.4MBなので、WiFiがなくてもダウンロード可能。

しめた、と思ったのだけど、山奥なのでなかなかダウンロードが終わらない。


結局、夜の練習時間ではダウンロードが終わらなくて、翌日に持ち越し。少し悔しいが、演奏に参加できる光明が見えたのは素直に嬉しい。


それから談話室に行って談笑して、寝た。

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「コンピュータと離れて、優雅で贅沢な時間を過ごすのです」


と米澤先生は言う。

なるほど確かにそうかもしれない、と思う。

でも僕はコンピュータを捨てられない。ブログだって書いちゃう。

とはいえそれはそれで、コンピュータを使わない時間を大事にするというのがわからなくもない。


こんな休日もいい。と思った。

米澤先生、誘ってくれてありがとね